パソコンや情報通信分野の規制や規格は、それが必要であるとしても、供給者側の都合ではなく、ユーザー側の視点に立ったルール作りが大切であり、現状ではユーザーに対する配慮が欠けているのではと思われることを書き留めてみました。
工業製品でも、食品衛生法による食品添加物の規制、薬事法の対象となる医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の規制、道路運送車両法による自動車の保安基準、事故の危険がある電気器具やガス器具など製品安全4法の対象となる製品の規制など、法律に基づく規制は守られていることで安全が確保されています。
この規制についても、電気用品安全法のPSEマークの表示義務について、2006年3月末にマークなしで販売できる5年間の猶予期間が切れるテレビ、音響機器、冷蔵庫などの家電製品について、リサイクルショップなどの中古家電も新製品と同じ扱いとなり、2006年4月1日からPSEマークを表示しなければならないことについて反対運動が起き、一騒動となりました。
この件は、年代ものにプレミアム的な価値があるオーディオ機器などを例外扱いとすること、検査機器の提供など中小リサイクル店でのPSEマークを貼るための検査をサポートすること、挙句の果てにはレンタルなら良いという解釈で弾力的に運用することにより決着しましたが、ものを大切に使うリサイクルの道を閉ざすことは好ましいことではなく、たとえ理のある規制であってもユーザーへの配慮をしてコンセンサスを得ることが重要です。
しかし規格は、技術や製品の標準化であり、本来は規制とは異なる概念です。
多くの工業製品は、各種の規格に定められた仕様に基づき開発されており、汎用性がある規格に適合することにより、ユーザーにとっても便利に使える製品となっています。
例えば、自作パソコンは、IBMのPC-AT互換機の流れを汲むATX規格が基本となっており、ATX規格のPCケースとマザーボードがベースとなって、組み込めるパーツの仕様が制約を受けます。
もちろん規格は、永久的に変更が無いものでもなく、ATX規格から派生してMicroATX規格やFlexATX規格、さらにはBTX規格など大きく仕様の変更を図ることもありますが、独自仕様の製品では将来的に互換性がネックとなる心配があり、新しい規格として位置づける意味があります。
このBTX規格は、やや供給者側の都合で提唱されたために、主流とはならずに消えていくかもしれませんが、それでもパソコンのパーツの規格は、比較的柔軟な部分があります。しかし普段ユーザーが気づかない制約があって、規格に外れた製品はシャットアウトされる分野もあります。
規格外の製品が登場しないこと自体は、すべてが悪いことではありませんが、規制や規格を保守的な考えで排他的な砦とすることは、優れた便利な製品やサービスの開発に向けた自由な発想を縛ること、その結果、ユーザーに不自由さや負担を強いることとなり、好ましいことではありません。
通信・放送の分野では規制と規格が混沌としており、国内的には十分なコンセンサスが得られていないと疑われることや、国際的には通用しないと思われることが起こっています。
NTT東西の排他エリアが根にある東西格差の問題、NTTにとって負の遺産である電話加入権の問題、ADSLなど既存の電話回線を使用する通信サービスの干渉の問題、無線LANのIEEE802.11aの周波数帯の変更によるアマチュア無線との干渉の問題、地上デジタル放送の推進とアナログ放送停波の問題、そのネックとなるコピーワンスの規制の問題など、未来志向で考えても迷走しているように見えます。
迷走というよりは、通信業界や放送業界の既得権益保護のために改革が遅れているという感じがしますが、どのような実害があるのか確認することが、望ましい姿に近づく道しるべとなることでしょう。
1952年に発足した日本電信電話公社は、1985年4月1日に日本電信電話株式会社法により解散し、日本電信電話株式会社に承継され、その後、1999年7月1日に、「NTT」から、「NTT東日本」、「NTT西日本」、「NTTコミュニケーションズ」の3社が分割され現在に至っています。
NTTとNTT東西地域会社は、民営化した今でもNTT法による規制を受け、法第2条に基づきNTTは、電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を、NTT東西地域会社は、それぞれ管轄地域内の地域電気通信業務(自社電気通信設備を設置して行う同一の都道府県内における電気通信業務)とその附帯業務を行っています。
そしてNTT東西地域会社は、管轄地域外の地域電気通信業務や、自社保有設備や技術・職員を活用した県外通信などの業務を行う場合は総務大臣の許可が必要であり、また法第12条に基づき、毎営業年度の事業計画は事前に総務大臣の認可を受けなければならないことになっています。
このように排他的なエリアでの業務によって東西地域会社間の経営体力に格差が生じ、旧NTT分割の際に大前提とされていた全国均一の料金体系を維持する「ユニバーサルサービス」は、その維持のために格差是正の措置が必要となっていますが、そもそもNTTの地域分割がユニバーサルサービスの維持に適していたのかという仕組みの問題があります。
また他の通信事業者との公正な競争という観点では、ソフトランディングが必要であったとしても、それほど参入障壁が低くなったわけでもないようです。
一時、市内、県内、県外、国際と分けた固定電話の会社選択制度であるマイラインをどうするか利用者が迫られたときがありました。このマイラインで県外と国際は、NTTコミュニケーションズとその出資会社「ぷらら」は選ぶことができても、NTT東西地域会社を選択することができません。
これもNTT法でNTT東西地域会社は県内通信に縛られているためですが、電話会社の番号を電話をかける都度ダイヤルする面倒を避けるためであっても、面倒なマイライン登録と以降はむしろ固定されるため当時のACRやLCRより料金が安く便利になったのかどうか不明です。今はマイラインのことが話題ともなりませんね。
また携帯電話の急速な普及で、家庭電話は通話のために使うことが少なくなり、データ通信のための回線として重要となったのですが、これも光回線に置き換わるようになって旧来の電話回線や通信設備は不要となっていくことでしょう。
また、今でこそFTTHとADSL合わせて2100万件オーバーのブロードバンド契約者数を擁していますが、諸外国に比べてブロードバンドの導入のスタートが遅れたのは、電話回線を利用した通信サービスへの開放が遅れたことと、その背景としてNTTがISDN回線にこだわったことも一つの要因でしょう。
この間、どうも目先のことばかり囚われていて、将来のビジョンが描けていなかったように思われますが、家庭に繋がる通信回線として既存の施設の維持管理に大きなコストが掛かるようであれば、それこそ光ファイバー網の整備を急ぐ必要があったでしょうし、もともと公社から承継した国民の財産である基盤設備は、多様な利用形態に供するために早く開放するべきであったのでしょう。
電話加入権は、電電公社の時代から続いており、電信柱や電話線などのインフラを敷設するために加入者の負担を求めたものであり、現在、その必要性がなくなっています。むしろ光回線の普及で既設のインフラは遊休化し始めている状況の中で、その活用に対して負担を求めることは理に合わないことです。
平成17年3月1日より、施設設置負担金(電話加入権)が37,800円(税込み)と従前の半額になりましたが、現在はADSLサービスと同時に申し込むと無料で加入権が取得できるプランがあります。
施設設置負担金は、電話加入権が債権として市場に流通していることを理由に全廃が困難とされていますが、もともと対価を受け取ったところが責任を負わない債権が存在することが問題であり、むしろNTTが安い価格で買い戻して撤廃することを考えた方が良いぐらいです。
光ファイバーを敷くのにも工事費がかかりますが、これは利用者が負担すべきものですから支払う必要があり、施設設置負担金も新たに敷くためのコストとしていくら必要かということで費用として徴収すれば良く、この初期コストとランニングコストを光回線とアナログ回線と比べて利用者が選べば良いのです。
幸い光通信回線は、電力系の事業者なども自前で整備しており、また2006年8月に発表された「次世代ブロードバンド戦略2010」によると、2010年にはFTTHを中心とした超高速ブロードバンドの利用可能な世帯が90%以上となることを目指しており、光通信回線の導入でついでにIP電話も利用することができます。
よって旧来のアナログ通信設備や電話回線は、光通信回線の必要の無いユーザーのために、コストを掛けないで維持していく、そのために必要があれば規制の緩和をしていくべきなのでしょう。
ブロードバンド化を推進するために、多くの人が利用することによる通信設備の効率性を追求することや機材・機器の量産により採算ラインを下げることも重要でしょうが、現在の環境で十分なユーザーも多いことから、ユーザーの負担を無理強いしないビジョンが重要です。
2006年12月1日に、全国すべての都道府県庁所在地が地上デジタル放送の視聴可能エリアとなったことを記念して式典が開催され、今後12月1日を「デジタル放送の日」とすることと、「第7次デジタル放送推進のための行動計画」が発表されました。
しかし地上デジタル放送への移行の結果、2011年7月にアナログ放送が終了することとなっており、その国民に与える負担の大きさを考えれば、タレントや女子アナを使って記念式典を開いて浮かれていることではないでしょう。
デジタル放送のメリットは、電波が届き受信状態が良ければ、ノイズがない鮮明な映像が視聴できること、解像度を高くして大きな画面で精細に表示できることですが、何もアナログ放送でも受信状態が良ければ十分楽しめる画質で現在放送されています。
またデジタルの双方向サービスが始まるといっても、クイズの応募や投票ぐらいでは関心の無いユーザーが多いでしょう。
デジタルとアナログの方式が違うことによる性能の差は、デジタルでは映像を圧縮して送信することができるため高解像度にはできるものの、単純にデジタルだから優れている、アナログだから劣っているということではありません。
例えば、静止画像でも一眼レフカメラとデジタル一眼レフカメラでは、むしろ今でもプロは古い一眼レフカメラを愛用するように、デジタルだからといって必ずしもアナログを超えた美しい写真が撮れるわけではありません。
一眼レフデジカメは、まだこれから進化するという反論があるかもしれませんが、真空管アンプの澄んだ音色は永久にデジタルアンプでは出ないと思われます。人の感性はデジタル的ではないという面があるのでしょう。
また、パソコンの液晶モニタでは、アナログ接続でもデジタル接続でも可能な製品が多くなっていますが、画面を見ては区別はつきません。
そして、しょせんテレビは放送映像を写すモニタであり、元のソースが良ければ美しく、古い映画のように粗い画像であればきれいに見ようとしても限界があります。
そのため、美しい映像かどうかは、テレビカメラなど収録機材の技術進歩と撮影技術、編集技術の向上によりソースを良くすることが最も重要ですが、デジタル収録機器で番組を撮った後、デジタル放送で番組を流しても、一旦アナログ変換し放送しても、現にアナログハイビジョン(MUSE方式)映像が放送されているように、きれいなものはきれいに映ることでしょう。
もちろんデジタル放送では、ハイビジョン(HDTV)放送の番組が多くなっていくと思いますが、この有効走査線が従来のテレビ放送の倍以上となる1080i(横1920ピクセル×縦1080ピクセル)と高精細なハイビジョン放送も、大画面のワイドテレビでなければコストをかけて買い換える価値が無いようなものです。
ハイビジョン規格にはいろいろあり、国内放送では解像度の高い16:9ワイド画面の1080i(インターレース)が使われますが、海外では720P(プログレッシブ)も使われていくようです。
このハイビジョン規格はユーザーが選べることではありませんが、それぞれ長所・短所があり、インターレースは番組の制作・編集段階で画質が劣化しやすいことや、プログレッシブ方式のプラズマや液晶のフラットテレビでI/P変換するときにノイズが発生するおそれがあるので、現在の地デジ用フラットテレビで画質面で有利な規格ということでもないようです。
次世代テレビでは、FED(Field Emission Display:電界放出ディスプレイ)や有機ELなど受信機側の性能も良くなるようですから、何年か先には状況が変わるのでしょうが、プラズマテレビは小型化が難しく、液晶テレビは小型テレビがあっても、バックライトがあたるため真っ黒を表現することが苦手などコントラスト、階調性(色の濃淡の滑らかさ)などは既存のブラウン管テレビに勝てません。
そのため地上デジタル放送向けのテレビばかりとなった家電ショップのテレビ売場は、大型テレビばかりずらりと並んでおり、消費者に地デジではこんな価格の高いテレビに買い換えなければならないのかと悪い印象を与えています。
第7次デジタル放送推進のための行動計画では、消費者が求めやすい、小型、低廉な機器の多様化・普及について検討を行っていくことが重要としています。
平たく言うと、総務省がデジタル放送の推進が中々国民の理解が得られないのは、家電メーカーが高いテレビばかり売りつけようとすることが原因の一つとメーカーにやつあたりをし、メーカーは、小型テレビでメリットを出すことは難しく、安かろう悪かろうでは買い換えてもらえないと思っているということです。
学生の単身世帯や老人世帯などで広い部屋で見るのでなければ小型テレビで十分でしょうし、標準的な家庭でも2台〜3台のテレビは保有しており、リビング以外ではたとえ薄型でも大きなテレビは邪魔でしょう。そもそも、まだ使えるテレビをそれ程メリットもないのに全て買い換えなければならないことは、ものを大事に使う人には納得できないことでしょう。
また地上デジタル放送対応のチューナーを購入し受信することもできますが、新しく地上デジタル放送のテレビ塔が建った地域では、UHFアンテナの向きを調整して受信できるようにする必要があります。
地上デジタル放送対応機器の購入時期の問題もありますが、家庭にあるテレビのうち従来のアナログ放送しか視聴できないテレビがあれば、結局UHFアンテナの向きを変えて対応することはできず、新しいUHFアンテナを設置し2本UHFアンテナを使うことになります。
さらにブラウン管式テレビ受信機を廃棄する場合には、家電リサイクル法に基づきリサイクル費用と収集・運搬に要する費用が必要となり、地上デジタル放送の推進によるアナログ放送の停波は各家庭に少なからぬ負担を求めることになります。
2004年4月から導入されたコピーワンスの問題は、既にデジタル放送を視聴しているユーザーに極めて不評です。 これも、これまで自由にできたテレビ番組の録画が地上デジタル放送では不自由となり、地上デジタル放送の推進に対する国民の反発の要因となっているため、総務省では、コピーワンス規制を見直す方針です。
劣化が少ないデジタル録画の違法コピーが出回れば、映像コンテンツの製作者や製作・配給会社は経済的に大きな損失を被ります。
そのため初めから違法コピーができないようにする仕組みとして、コピーワンスが取り入れられたのですが、まずコピーワンス規制を誰が決めたのか、その経緯が不透明で業界関係者だけで導入を決めたのでは国民のコンセンサスが得られてなく、総務省の情報通信審議会の平成17年7月29日に発表された第2次中間答申では改めて見直すことになっています。
放送番組の製作者の著作権を保護する必要があるとしても、著作権法第30条で私的複製は認められています。
そして法第30条第2項で、私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならないことになっており、そのために法第104条の2〜第104条の10で私的録音録画補償金の仕組みが作られ運用されています。しかもこの補償金は、デジタル方式の録音録画機器・媒体の販売価格にあらかじめ上乗せされていて、ユーザーが負担しています。
法律上の問題ですから司法の判断に委ねることが本筋ですが、法制定当初は、原盤に近いコピーができるようになるとは想定されていないと言っても、複写の技術論の問題ではなく、使用目的の問題、つまり家庭内で使うのであれば複製は認められていると素直に解釈するべきでしょう。
よって法令の改正をせずに、コピーを1回までに規制する根拠が無いのに、事実上できなくしてしまったコピーワンス規制は、なぜなら国民が信頼できない、ユーザーが悪いことをするからという考え方が強すぎる行き過ぎた保護であり、批判されて当然でしょう。
違法コピーを販売してはならないことは犯罪ですから当然のことで、少ない枚数しか売れなければ価格を下げることができないことも理解できますが、制作意欲をなくすという話は、もともと視聴されなければ作り甲斐のないことであり、優れた作品はコストや利益ばかり考えて作られてはいないでしょう。
コピーワンスの見直しについては、まず情報通信審議会の「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」の場で、JEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)はコピーワンスに変わる新しい保護システムとして「EPN」の導入を提案し、放送業界は、それに反対する放送事業者の考え方を資料として提出しています。
現在も、情報通信審議会の「デジタル・コンテンツの流通の促進に関する検討委員会」に審議の場を移して検討が続けられており、JEITAは再び「EPN」の導入を提案しましたが、著作権保護団体や放送業界は、まだ運用改善で対応できるとしてコピーワンスに拘り、その決着には時間がかかるようです。
そして審議のやりとりは、著作権保護団体や放送業界と結託してコピーワンスの導入に力を貸した情報家電メーカー業界が、国民の批判の矢面に立つことや国内で製品が売れなくては困るので寝返って、「EPN」を持ち出したけれども話がまとまりそうにないという感じです。
総務省の調査した資料によると、海外では、スクランブルをかけた放送やコピーワンスのような規制のある国は無く、むしろ法律では家庭での複製の妨害をしてはならないという趣旨でユーザーの権利が保護されています。
米国では、来年7月からデジタル放送に対してコンテンツ制御フラグ「Broadcast flag」を導入しようとしていますが、これはインターネットを利用した2次配信を禁止するものであり、私的に録画・複製することを制限するものではありません。
この私的複製の問題は、日本では著作権法の例外で認められているという捉え方をして議論がされていることが多いようですが、むしろ著作権法そのものが憲法の例外であり私権を制約しており、少なくとも外国ではそう考えているのでしょう。
なお審議会では、放送にスクランブルをかけ見る仕組みであるB-CASカードと、受信した放送を録画する方法であるコピーワンスの問題を別の問題ととらえ、あえてB-CASカードのことに触れないように議論されているように思えますが、B-CASカードも撤廃してほしいものです。
放送者側は、なぜ地上デジタル放送でB-CASカードが必要?との質問に、もともとスカパーなど有料放送向けの仕組みであるB-CASカードを地上デジタル放送でも採用したとのことですが、地上デジタル放送は、NHKは受信料を徴収しているし、民放も国費を投入したインフラを使っており、公共性がある放送に商業ベースの仕組みを採用することはおかしなことです。
政府の知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会が、平成18年2月20日にまとめた「デジタルコンテンツの振興戦略」では、10ページの提言2で、検討プロセスを公開して地上デジタル放送に関わるコピーワンス技術の見直しを行うよう提言しており、20ページの提言10の(5)で私的録音・録画の抜本的見直しも提言しています。
前述の総務省の情報通信審議会では、この知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会の提言と方向性は一致していますが、著作権法は文化庁の所管であり、文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」での見直しは、著作権法第30条の範囲外とすべき利用形態等について(案)を見ると、ベクトルの向きが違うのではないか、パブリックコメントに寄せられている意見に耳を塞ぎ規制を強化しようとする議論に終始しているように思われます。
上位の著作権分科会(平成18年3月1日)における私的録音録画にかかる意見概要がユーザーの利益に過度に比重がおかれているような規制緩和に反対を表明しており、地上デジタル放送の録画制限は著作権保護技術の採用により対応可能としているなど、B-CASカードありきの議論では話になりません。
B-CASカードが無ければテレビが見れないでは、いずれ大騒動になるでしょう。業界や審議会の関係者は、リサイクルでものを大切に使う消費者が多いことを知らないとは思いませんが、2006年4月のPSEマークの騒動を忘れたのでしょうか。
地上デジタル放送の推進を始めようとするときに、多額な国費を投入することに、反対を表明している有識者の団体があり、こうした主張があっても進めてきた国策です。
そして、いよいよアナログ停波となれば、日本中の全世帯にテレビを買い替えさせることになり、電波の有効利用のためにという説明では納得できないでしょう。その時期になればアナログ停波はできなくて、何年か停波を遅らせるよりないという事態になるのでしょうか。
規格争いについて顕著な事例は、ビデオのベータ方式とVHS方式が一時並立し、SONYはベータ方式が葬り去られた経験をしています。
この後、映像の記録方式としては、CDは録音用で映像の録画では容量的に主役とならず、DVDでビデオテープを置き換えつつあり、そのDVDでは、DVDマイナス陣営とDVDプラス陣営に別れ、世界的にはDVDプラス、国内ではDVDマイナスが主流となりましたが、最終的には記録型DVDドライブはDVDプラスもDVDマイナスも両方ともサポートすることで不自由なく使えるようになりました。
また家電系の機器とパソコン用の機器との互換性も、一部DVD-RAMがパソコン用のドライブで使えないものがある程度であり、民生ビデオ用のソフトウェアとそのフォーマットをサポートすれば、ハードウェア的にはパソコンで処理が可能となっています。
ただし、地上デジタル放送のDVDレコーダーでは、前述のコピーワンス規制の関係で、CPRM(Content Protection for Recordable Media)対応DVDメディアが必要であり、DVD+メディアはCPRMに対応してなく今のところ使えないようですが、これもDVDマイナスは情報家電系、DVDプラスはパソコン系が主であることから、情報家電とパソコンの垣根のようなものです。
現在は、次世代DVD規格であるBlu-ray Disc(ブルーレイディスク、BD)規格とHD DVD(High Definition DVD)規格の主導権争いが続いています。
この規格争いはどちらも日本の企業が主導しており、SONY、松下、日立などのブルーレイディスク・アソシエーション 陣営と、東芝、NEC、サンヨーなどのHD DVDプロモーショングループ陣営に分かれており、2005年に規格統合の協議が決裂した後、2006年以降それぞれの規格の製品が開発され登場しています。
記録容量の大容量化という目的では、HD DVDは片面2層記録30GBのドライブが製品化されているのに対して、Blu-ray Discは片面2層記録50GBのドライブが製品化され、将来200GBの容量まで拡張可能と優れ、記録型ドライブの製品化の状況も、Blu-ray陣営が先行しています。
しかし価格的は、HD DVDのドライブは既存のDVDの仕組みに近いためコスト面で有利であり、高価なBlu-ray Discドライブの半値以下で製品化されており、しょせんビデオデッキ替わりであれば安い方が良いという価格面での大きなメリットがあります。
最近は、記録型ドライブの開発で先行するBlu-ray陣営の参加企業が増え、当初は2分されていた映像コンテンツの供給側のハリウッドの大手映画会社もBlu-ray陣営のサポートが増えて、Blu-ray優勢の流れに傾きつつある情勢ですが、マイクロソフトとインテルはHD DVDの支持を表明しています。
特にマイクロソフトは、パソコンや情報家電との連携の強化を追求しているゲーム機Xbox 360向けに、HD-DVDプレイヤーを提供しており、インテルもパソコンの入出力装置としては互換性やコストが重要と考えるのは当然でしょう。
情報家電としても、Blu-rayレコーダーは、普及のためにはコストダウンが課題でしょうが、パソコン向けのドライブとしては、DVDドライブのほとんどの製品が今では多規格対応のDVDマルチドライブとなっているように、将来は「Blu-ray Disc」と「HD DVD」の両規格をサポートする機器が登場して決着という可能性が高いでしょう。
最後に、ユーザーが製品を購入するにあたっては、将来も長く通用する規格の製品なのかどうか、また規格外の独自の製品は生き残っていけるもの、つまり使い続けていけるものなのかどうかということを調べることが重要になっています。
Blu-ray DiscもHD DVDも、まだまだ技術的に完成されてなく進化中ですから、慌てないで少し待つことが賢いユーザーの選択です。また地上波デジタル放送受信用の大画面テレビも、前述のような議論がされている状況ではまだ早いでしょう。
もちろん技術的な進歩とその歴史的な経緯が背景にあって、また車のブレーキペダル、操作系のスィッチの位置のように人間工学的に人が操作するために似てくることも多いでしょうが、すべての規格は、元を正せば、元々あったものではなく、関係者で協議され策定されたものです。
今ではテレビのチャンネルの選択はリモコンを使うのでしょうが、昔はチャンネルを回していた、その時代の方が良かった、とならないように扱いやすい製品となるよう規格を定めることが本来のあり方でしょう
規格は規制とは異なり、業界団体で定めて良いのでしょうが、規格の制定はユーザビリティへの配慮を特に重視して欲しいものです。
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